【書評】2時間で丸わかり 会計の基本を学ぶ

会計を学びたくて本書を読了。筆者も2時間で本当に会計が学べるのか?と何度も問いかけては自分で答えるというマッチポンプを本の中で繰り返しているのだが、本当に2時間で全て理解できるかは別として、この本は本当にわかりやすい!

 

「利益 = 資産 – (資本 + 負債)」という公式と、それに対してブロックを積み上げるのが営業活動、という概念モデルは目から鱗だった。ただし、この手の会計本は何冊も読んでいるのだがどうしても身についているきがしないので、こういった良書を読んだあとは実際に自分で決算書からモデル切り出してみるなどしなければいけないのだろうなあといつも思う。

 

そして、いつも実施しない。良くない(おい)。とにかく内容は文句なくオススメである。会計初心者ならまずは読むべし。

【書評】解任

ライブドア監査人の告白 に引き続き粉飾モノを読了。

 

内容としてはこちらの方が面白かった。なにせ本件は日本の粉飾の歴史の中に燦然と輝くオリンパス事件を題材としており、筆者はまさにその時この出来事の渦中にあったオリンパスの元社長である。彼は自社の粉飾を告発しようとして取締役会から解任されてしまうのだが、日本企業のガバナンスの醜悪さがこれでもかと吹き出すその内容には目を見開かざるをえない。

 

日本固有の悪習やガバナンス機構の機能不全はライブドアより色濃くでてていると思う。

 

おそらくオリンパスに限らず日本の大企業はこんなものだろう。こういった悪習を早く断ち切るためにもきちんと機能する監査機能、外部取締役会が必要だと切に感じる。一流企業とはいえダメな会社は一刻も早くつぶれればいいと個人的に思っている。東芝もそうだが、バブル時代の悪癖が抜けない会社はまだまだあるだろうと思うのでどんどん明るみになって欲しい。

 

本書の描写の中で特に興味深い点は日本のメディアの対応だ。メディアがまったく報じない様はライブドア事件と比較して同じ国の出来事とは思えないぐらい、その反応の違いには愕然とする。

 

オリンパスの場合は結局国外メディアの報道を逆輸入する形で(それでも限定的に)報じられたわけだが、会社のガバナンスだけではなくメディアまでこの体たらくではとても海外の信頼を得ることなどできない。そう痛感せざるを得ない重さが本書にはある。

 

本書が出版されたあとになるだろうが、結局オリンパスは複数の逮捕者を出し、訴えられて負けた株主への賠償金を支払い、著者には2012年に1,000万UKポンド(12億円)の和解金を支払う形で幕引きしている。個人的に著者には若いという形ではなく徹底的に戦ってほしかった気もするが、本書にも綴られている裁判費用や家族の疲弊を考えると仕方なかったのだろうと推察する。

【書評】ライブドア監査人の告白

 

タイトルの通り、ライブドア事件で監査を担当していた港陽監査法人が当時の事件を振り返った内容。事件のまさに当事者だけあってさすがに描画が生々しい。粉飾の有無に関わらずライブドアという会社がまともでなかった(少なくとも筆者からはそう見えていた)というのがよく分かる内容。

 

加えて、そこから透けて見えてくる日本の監査制度の機能不全が本書の白眉。ライブドアはたまたま世間の目に触れた氷山の一角であることは想像に難くない。おそらく出る杭が叩かれただけなのだろう。

 

とはいえ筆者はホリエモンに関しては、コンプライアンス軽視の面はあるにせよ優秀な経営陣と評価していた点が興味深い。ただしCFOを筆頭に周りの実行役はひどかったようだ。このあたりの描写は主観とはいえリアリティがある。

 

一方で、筆者自身に関する言及は前任者の監査役を非難すると共に自身はライブドア経営陣と毅然と戦ったと主張する。が、少し自己弁護が過ぎるかな・・・というのが率直な感想。終盤の章では「会計士とは」といった内容の自身の職業観を滔々と語る部分があるのだが、これは完全に蛇足。本書を購入する読者が著者の会計士かくあるべき論を聞きたいとはあまり思えないのだが、そのあたり客観視できないあたりも自意識が強いタイプなのかな、と感じてしまう。

 

そのあたりのポジショントークに見えてしまう部分が鼻につき、全体の描写にもなにかしらの色眼鏡がかかっているのではないかと訝ってしまうのがとても惜しい。

 

 

【書評】今すぐプライベートカンパニーを作りなさい!

 

実務的には役に立つ説明が多々あった。良書と思う。

しかし、頑張って節税して生まれる差が「100万円は違ってくる」という主旨なのがいただけない。

 

その程度の金額であればもっと率よく稼げる手段がありそうに思えてしまう。そんなものなのだろうか・・・なんにせよ、節税の実務という点でためになる本ではある。

【書評】銀河ヒッチハイク・ガイド

 

一部の人、特に一部のITエンジニア界隈で異常に評価が高い本書を読了。一番の動機は、確かイーロン・マスクのおすすめ本に挙げられていたからだった気がする。

 

読んでみた感想としては、まあ面白い。いや、興味深い、といった方が適切かもしれない。所々に示唆深い描写があり、それらについては本当に感心した。1978年の作品(私が生まれる前!)ということを考えると驚異的ですらあると言える。Googleで「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」と検索すると「42」と答えるというのは有名な話だが、これは機械学習全盛の昨今で発生している事象を見事に予知している。ディープラーニングで導き出した解答に対して、どういう過程でその解に至ったか説明するのが困難である、という現象は昨今の人工知能界隈でのあるあるネタになっているので、それを40年前に言い当てた作者の先見性は凄い。先日Googleから公開されたディープマインドの棋譜を見ている時の感覚はまさに「42」と言われた時と同じ類のものだ。

 

それに加えてエンターテイメント作品としても非常に良く出来ていて読んでいて飽きるところがない。テンポよく読めて、私の場合読了するまでに1時間かからなかったのではないだろうか。

 

ただ、非常に個人的な見解で恐縮なのだが、SFモノで、「宇宙人の手足」のような表現が出てくる時点でちょっと萎えるなあ、という気がする。地球以外に存在する生命体が我々の認識するところの「生き物」と対して相違がない、「はずがない」、というのが私の感覚だ。「42」という解答が我々に知覚不可能な様に、地球外生命体と呼ばれる存在も我々の知覚を超えたなにかであると思うのだ。日本人とアメリカ人でも会話してみると最初は感覚の違いに戸惑うのに、別の星の生命体に対して、外国人と接するノリでコミュニケーションが取れるとはとても思えないのである。人間と虫以上の違いがそこに横たわってしかるべきと思うのだが。

 

というわけで、「人間と同じように手足があって」「多少の常識の違いはあるにせよ普通に意思の疎通ができる」時点で全然リアリティないなあと思ってしまう。手塚治虫さんの確か火の鳥だったと思うのだが、石が突然動き出しては、翌日にはまた同じ場所に戻る惑星があって、それがその惑星では「生命」なのだ、という描写があって感銘を受けた記憶があるのだが、逆にいうとそれぐらいは違って当たり前なはずだ、という感覚がある。そういった観点で見ると、やはり手塚治虫や、スタンリー・キューブリック(の、2001年宇宙の旅)の方が宇宙の解釈として上位であると感じてしまう。

 

そういった諸々は承知の上で、暗黙のルールの中でのストーリーを楽しむのがSFの読み方なのかもしれないが・・・

私がイケてると思うエンジニアの職業4つ

土管屋

スキルセットはインフラ寄り + 高いサーバーサイドのコーディング能力。

とにかく手が早く、黙々と仕事をこなす。

コミュニケーション能力にやや問題があり、UI/UXは苦手。

 

ホテルマン

顧客やPMの意見を聞き、それを画面で表現する能力が高い。

きれいな画面を好み、ボタンの角のborder-radiusを何ピクセルにするかとてもこだわる。

明るい性格で聞き上手、人の要望を汲み上げて最適なUXを提供してくれるので、ビジネスサイドから尊敬を集める。

 

医者

インフラの雄。いつも謎の線グラフがピコピコしてる画面を眺めている。

グラフの波形から異常を読み取って、ブツブツ言いながら黒いコンソールを叩く。

いつも冷静沈着。

 

ドラえもん

ミドルウェアやツールの知識が豊富。

「こんなのないかな」と誰かがつぶやくと目ざとく聞きつけてはいい感じのツールを持ってきていい感じの運用をセッティングしてくれる。

新しいもの好き。新型のiPhoneが出るたびに並ぶ。

【書評】なるほどデザイン

デザイン書らしくきれいな本。目で見て楽しい。

 

内容としては、デザイナーの実務を見ているようで楽しくはあるのだが、テクニックが体系立てられてないので自分で実践する際の難しさは感じてしまった。ウェブやアプリのデザインにも転換できそうな部分と、書籍やチラシ限定の部分が入り混じっていてちょっとエンジニアには厳しめ。要素の意味付けというより人を惹きつけるアトラクトに言及している部分が多いので、プロモーションサイト等に関わるウェブデザイナーの方は参考になるのではと思った。

 

「こんな細かいところまで見るんだ!」というのが単純に面白かった点。あとはやっぱりきれいな本なので、私はKindleで買ってしまったが実際の本を買って本棚にこれみよがしに並べておく、という使い方もオススメだ(笑)

藤井聡太四段29連勝について語る人についてアマチュア六段が思うこと

藤井聡太四段29連勝、歴代単独トップ

 

 

藤井聡太四段が29連勝を達成した。

 

すごい。すごすぎる。しかもデビューからストレートに29連勝なので通算成績は29勝0敗。今だ公式戦で負けなし。信じられない成績である。

 

羽生さんのコメントにもある通り、内容を併せ持っているのがすごい。それまで歴代1位だった神谷八段の28連勝はもっと、勢いに飲まれて相手が勝手にコケる内容のものが多かったと記憶している。正直彼のスター性にはケチのつけようもないし、以前書いた通り、ぜひ羽生さんを超えてほしいと思う。

 

ただ、昔からの将棋ファンとして敢えて言わせてほしいのが、このニュースに関して物知り顔にコメントしてる人、将棋のこと知らなすぎな件。ワールドカップの時だけサッカーに関して物知り顔でうんちく垂れる人に対してサッカーファンが感じる憤りと全く同じなのだろうなと思う。

 

 

やれ

 

「なんで中田はあそこでパス出さねーんだ」

 

「まじでフランスのサッカーディフェンスばっかりでおもんない」

 

「野人はあのゴール決めた瞬間だけ輝いてたけど、能力的には足速いだけ」

 

 

 

 

お前らこの四年間サッカーの話題なんて一つもしてなかったやんけ!(例えが古いのはすいません)

 

とにかく藤井聡太四段の件に関しては注目度がべらぼうに高く、それに比例してコメントを述べる方々の数も多い。わかりやすくヒドい例で言えば大竹さんの謎批判とか(笑)

 

 

藤井四段に暴言? 「14歳のガキに調子乗らすな」に批判殺到

 

 

私が今回感じる「物知り顔」な人たちの、最も鼻につく意見。それは

 

藤井聡太四段はAIで強くなった

 

である。

 

100%間違っているとは言わないが、将棋ファンから言わせてもらえば単純化しすぎで、そんなに簡単な話しで強くなれたら苦労しないわ、というのが正直なところ。彼が将棋を始めたであろう5歳ごろであれば、将棋ソフトもプロに勝てるレベルではなかった。

 

おそらく1桁歳の時にはプロを目指していたであろうから、その頃はソフトよりも強い人が周りにいたはず。一番基礎体力がつく幼少期にはAIを利用して学習することは明らかに最適な学習法では無かったはずだ。

 

そもそも藤井聡太四段の一番の特徴は詰将棋を解く力。これはソフトなんて使わずに自分でうんうん考えてこそ身につくものだ。詰将棋にソフトを使うのはカンニングみたいなもので、裏表紙をめくれば正解が書いてある詰将棋において、ソフトを使うことに意味はまったくない。出題する側が余詰チェックに使うぐらいだ。

 

少なくとも、彼の技量のベースである終盤の読みの深さに関してAIがそれほど寄与しているとはあまり思えない。

 

ただ、本人も中盤から終盤の入口あたりにかけては学習にソフトを利用していると公言している。確かに今やそれが一番効率のいい学習方法なのだろう。合理的な手法で弱点を埋めるあたりも才能を感じる点ではあるが、藤井聡太四段の強さが「AIのおかげ」といった論調には首をかしげる。

 

思えば羽生世代が棋界を席巻した時も、「彼らはコンピューターで強くなった」という論説が流行った。ちょうどソフトが詰将棋においてのみ人間を上回ったり、過去の棋譜がデータベースで見られるようになった時期だったからそういう見方をする人が多かったが、今振り返ってみるとただの眉唾だったことが分かる。彼らはその当時のアウトロー感残る、「遊びも芸のうち」と言って憚らない年配プロ棋士よりも、圧倒的に将棋に対して真面目だったから強かったのだ。

 

そして、旧時代の棋士を駆逐した羽生世代の中でも、羽生さんだけは別格に強かった。旧世代との方法論の違いを強さの秘訣とするのが明らかに無理があるほど、羽生さんは飛び抜けていた。おそらく、藤井聡太四段もそういった存在なのだと思う。

 

 

ただ、本音を言えばみんながこれほど注目してくれて本当にありがたいとも思っている。三浦八段の騒動や、AIに名人敗北など、将棋界の存在意義が問われるような出来事が多かっただけに、この上ないほどポジティブな形で盛り上がっているのは素直に嬉しい。

 

本人はただ強くなりたいとだけ考えていると思うが、将棋ファンの勝手な願望としては、もっともっと勝ち続けて将棋界を盛り立てて欲しい。直近で大きなところで言えば竜王戦ドリーム。挑戦者にでもなったらドヤ顔コメントはさらに増えるのだろう。

【書評】ノンデザイナーズ・デザインブック

今更だがデザイン書として超有名なこちらの本を読了。

 

書いている内容は基礎的なものが多いが、案外こうやって体系立てて説明している本が日本語では少ないので文句なしにおすすめができる。

 

伝わるデザインを読んだ後にもう少し踏み込んだ詳細な内容をこれで学ぶというのが正しいステップだろう。

 

 

あと個人的に思うのが、ITサービスを設計するに当たってはこういったデザインに加えて、機能要件や画面構成、といった従来のデザイン論にプラスアルファが必要な要素が多々あるのだが、それを体系立てて教えてくれる本はないのだろうか。

私はその道のプロフェッショナルの人の働きぶりを直接見る機会に恵まれたのでそこからエッセンスを学んだが、そういうチャンスを得られる人は稀だと思うので、再現性のある学習ステップが知りたいのだがイマイチそれにあたる本がないと感じている。オライリーの本はあるが正直イマイチ感は否めない。

 

オライリーの「デザイニング インターフェース」は有名なので目を通したが正直内容が古いのとUIとしての最低限の話に終止しているので、デザイン論というよりはアプリケーション論の趣が強くてイマイチだった。

今でも最新のアプリやウェブサービスは片っ端からチェックしてUIUXのエッセンスを吸収してはいるが、どうしても独善的な解釈になりがちなので体系立てて記述している教科書的な本があれば嬉しいのだが。

 

例えばデザインでいうところの「近接」の法則をサービスの画面遷移ツリーに応用したときにどういったページ構成をとるのが良いか、といった類の話しをアプリケーション論でなくデザイン論の観点から知りたいところである。

 

フルスタックエンジニアなんて目指す必要はない

 

フルスタックエンジニアなんて目指す必要は無い

 

技術は目的達成のための手段 という論旨には賛同するが、それ以外に関してはよくわからない記述が多い。

主な主張は、器用貧乏を目指すのではなくシナジーを生むいくつかのスキルを極めるのが良いという話。

どうも筆者の定義として、フルスタック = 器用貧乏 という認識なのだろうが、それはあくまでレベル感の話であって、私はフルスタックエンジニアというのは指向性の話だと思っているのでしっくりこない。

 

技術は目的達成のための手段であるのならば、目的達成のために複数のスキルが必要であれば、それを習得していることは重要だし、また技術は目的達成のための手段であるのならば、目的を達成するだけの技術があればスペシャリストはいらないとも言える。

うーん。フルスタックという単語がよくないのか。

コンプリートすることが重要ではなく、目的を効率よく、あるいは高いレベルで達成できることが重要なのだが、筆者はそうでない前提にたって議論をしているようで、結局スキルが低いくせに新しい物にすぐ飛びつくタイプの人がフルスタックという単語を隠れ蓑にしているという意識があるのだろう。

 

でもそれってやっぱりレベル感の話で、使えないエンジニアと使えるエンジニアの差でしかなくて、そこにフルスタックという指向性の話を持ち込むのは間違ってると思う。フルスタックエンジニアであろうと、インフラエンジニアであろうとUXエンジニアであろうと、優秀な人は優秀、そうでない人はそうでない。それだけだろう。